BCP COLUMN 数字で見るBCP

BCPの策定率は?業種別の実態と最初の一歩

公開日 2026.09.16 最終更新 2026.09.26 読了目安 22分
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目次

「うちの規模でBCP(事業継続計画)は必要か」と社内で聞かれたとき、感覚だけで答えるのは難しいものです。

同じ規模の企業がどのくらいBCPを策定しているのか。業種によってどの程度の違いがあるのか。最新の調査結果を見ると、自社の位置を数字で確認できます。

内閣府が令和8年3月に公表した「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」から、現在のBCP策定率と、その背景にある企業の取組状況を見ていきます。

この記事でわかることは、次の5点です。

  • BCPの策定率は、大企業75.8%、中堅企業54.8%、その他企業52.1%
  • 「策定中」まで含めると、策定に取り組んでいる企業の割合はさらに高くなる
  • BCPを策定しない理由では「人材が確保できない」「スキルやノウハウがない」が上位
  • リスク対応を進めるうえでは「自社従業員への取組の浸透」が大きな課題になっている
  • 業種によってBCP策定率には差がある

BCPの策定率は、いま何パーセントか

内閣府の令和7年度「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(令和8年3月公表)では、「BCPを策定済みである」と回答した企業の割合は、全体で56.6%でした。

企業規模別では、大企業75.8%、中堅企業54.8%、その他企業52.1%となっています。

令和7年度調査、令和8年3月公表が最新

BCPの策定率を調べると、調査年度の違う数字が出てくることがあります。

2026年9月時点で最新なのは、内閣府(防災担当)が令和8年3月に公表した「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」です。

調査は令和7年11月1日から12月26日に実施され、5,052社を対象として1,759社から有効回答を得ています。回答率は34.8%で、企業規模や業種による回答状況の違いを考慮した集計が行われています。

この調査は平成19年度から隔年で実施されており、今回が10回目です。

大企業75.8%、中堅企業54.8%、その他企業52.1%

「策定済みである」と回答した割合は、大企業75.8%、中堅企業54.8%、その他企業52.1%です。全体では56.6%でした。

ここで注意したいのが「その他企業」という区分です。

内閣府の調査では、企業を「大企業」「中堅企業」「その他企業」に分けています。「その他企業」は、一般的な意味での「中小企業」と完全に同じ区分ではありません。

そのため、「その他企業のBCP策定率は52.1%」を、そのまま「中小企業のBCP策定率」と読み替えないよう注意が必要です。

自社と比較するときは、自社が内閣府の調査でどの企業規模区分に該当するのかを確認したうえで、数字を見ることが重要です。

「策定中」まで含めると、さらに高くなる

「策定済み」だけでなく、「策定中である」企業まで含めると、大企業87.1%、中堅企業65.9%、その他企業60.5%となります。

さらに「策定を予定している(検討中を含む)」まで加えると、BCPについて何らかの形で取り組んでいる、または取り組みを検討している企業はさらに多くなります。

一方、「予定はない」と回答した割合は、大企業2.6%、中堅企業8.3%、その他企業14.2%でした。

「BCPとは何かを知らなかった」は全体で3.4%です。

ただし、これらはあくまで今回の調査に回答した企業の集計結果です。数字を自社の状況と比較するときは、調査対象や企業規模の違いにも注意しましょう。

概要版だけを見ると、自社に近い数字を見落とす

内閣府の令和7年度調査には、概要版だけでなく、詳細な結果をまとめた本編があります。

概要版では大企業と中堅企業の数字が中心に紹介されていますが、本編では「その他企業52.1%」など、企業規模別・業種別の詳細な数字も確認できます。

会議机の上に開かれた、何も書かれていない白い書類の束。左右から伸びた二人の手が、それぞれ別のページを指さしている。奥に観葉植物とノートパソコン。

調査対象5,052社、有効回答1,759社、回収率34.8%

今回の調査は5,052社を対象とし、有効回答は1,759社、回収率は34.8%でした。

内訳は、大企業515社、中堅企業607社、その他企業637社です。

調査では企業規模や業種によって抽出率や回収率が異なるため、集計にあたって補正が行われています。

そのため、単純に回答企業だけを足し合わせた数字ではなく、調査設計に基づいて集計された結果として見る必要があります。

「大企業」「中堅企業」は資本金と常用雇用者数で決まる

内閣府の調査における「大企業」「中堅企業」「その他企業」は、単純に従業員数だけで決まるわけではありません。

業種ごとに資本金と常用雇用者数を基準として区分され、中小企業基本法の区分や日本銀行調査統計局の定義が援用されています。

たとえば、製造業その他と小売業では区分の基準が異なります。

業種 区分 資本金 常用雇用者数
製造業その他 大企業 10億円以上 301人以上
製造業その他 中堅企業 3億円超~10億円未満 301人以上
小売業 大企業 10億円以上 51人以上
小売業 中堅企業 5千万円超~10億円未満 51人以上

卸売業やサービス業などでも基準が異なります。

同じ従業員数でも、業種が違えば企業規模の区分が変わる場合があります。調査結果を比較するときは、この点も確認しておきましょう。

概要版と本編では、載っている数字が違う

概要版は全体の傾向をつかむのに適しています。一方、本編には業種別や企業規模別の詳細な集計が掲載されています。

自社と近い条件の数字を確認したい場合は、本編まで確認すると、より具体的な比較ができます。

先に、自社に置き換える3つの問いを持っておく

BCPの策定率は、単に「全国で何%」と見るだけでは、自社の状況を判断しにくい数字です。

次の3つの視点で見ていくと、調査結果を自社の取組に置き換えやすくなります。

自社の業種・規模と比べてどうか

まず確認したいのは、自社と同じ業種・企業規模の数字です。

全体の策定率56.6%だけを見るのではなく、自社に近い区分の数字と比較することで、現在の位置を把握しやすくなります。

ただし、業種別の数字と企業規模別の数字は、それぞれ異なる切り口の集計です。両方を単純に掛け合わせて、自社の策定率を推定することはできません。

備蓄は「あるか」だけでなく「何日分か」

BCPの策定状況だけでなく、実際の備えも確認してみましょう。

今回の調査では、飲料水、食料品、簡易・携帯用トイレについて、「備蓄あり」の企業だけでなく、「3日分以上」の備蓄がある企業の割合も調べています。

備蓄品については、あるかないかだけでなく、従業員数に対して十分な量があるかを確認することが重要です。

最初の一歩を、どこに置くか

BCPをこれから策定する場合は、最初からすべてのリスクや業務を整理しようとせず、重要な業務や災害時の連絡方法など、優先順位をつけて着手する方法もあります。

今回の調査では、BCPを策定していない企業が挙げる理由や、事業継続の取組を進めるうえでの課題も調査されています。

自社がどこで止まっているのかを確認してから、取り組む項目を決めるとよいでしょう。

今日のうちに確認できること

まずは、次の項目を確認してみましょう。

  • 飲料水・食料・簡易・携帯用トイレ・毛布が従業員分あるか
  • 備蓄品が何日分あるか
  • 自社の所在地がハザードマップ上でどのようなリスクに該当するか
  • 災害時の連絡手段が決まっているか
  • 重要な業務と、その業務を担当する人が整理されているか
  • 担当者が不在の場合の代替方法が決まっているか

こうした項目を確認すると、BCP策定の前に、自社の現状を把握できます。

策定していない会社は、何が足りないと答えているか

内閣府の令和7年度調査では、「BCPの策定を予定していない」と回答した企業に、その理由を尋ねています。

全体で最も多かったのは「策定する人材が確保できない」で36.4%、次いで「策定に必要なスキルやノウハウがない」で32.6%でした。

1位は「策定する人材が確保できない」36.4%

「策定する人材が確保できない」は全体の36.4%でした。

企業規模別では、大企業39.1%、中堅企業43.6%、その他企業34.0%となっています。

BCPの策定を進めるには、計画を作成する担当者や、各部門から必要な情報を集める体制が必要になります。

2位は「策定に必要なスキルやノウハウがない」32.6%

2番目に多かったのが「策定に必要なスキルやノウハウがない」で32.6%でした。

そのほか、「法令等による規定・規制がない」が26.4%、「策定費用が確保できない」が18.1%、「策定後の効果が不明」が16.7%となっています。

「BCPは重要と考えていない」は6.7%でした。

ただし、これらは複数回答の結果です。また、理由の割合だけから、企業がBCPを策定しない原因を一つに絞ることはできません。

理由の一覧

「策定を予定していない」と回答した企業が挙げた理由は、次のとおりです。

策定しない理由 全体
策定する人材が確保できない 36.4%
策定に必要なスキルやノウハウがない 32.6%
法令等による規定・規制がない 26.4%
策定費用が確保できない 18.1%
策定後の効果が不明 16.7%
親会社・グループ会社の要請がない 15.4%
過去に災害、事故の経験等がない 12.6%
策定に際して適切な相談ができる先・関係者がわからない 9.4%
株主の要請がない 8.9%
取引先や顧客からの要請がない 8.3%
BCPは重要と考えていない 6.7%

人材、ノウハウ、費用、相談先など、策定にあたって複数の課題があることが分かります。

中堅企業では「相談できる先がわからない」が目立つ

「策定に際して適切な相談ができる先・関係者がわからない」は、全体では9.4%でした。

中堅企業では19.7%と、全体より高い割合になっています。

BCP策定を進める際には、自治体や商工会議所、業界団体など、自社が相談できる窓口をあらかじめ確認しておく方法もあります。

最大の壁は「従業員への浸透」

BCPは策定するだけでなく、実際に従業員が内容を理解し、災害時などに行動できる状態にしておくことも重要です。

今回の内閣府調査では、リスクが発生した時の対応を従業員に浸透させ、実効性を高める取組を実施している企業に、その取組を進めるうえでの課題を尋ねています。

課題の1位は「自社従業員への取組の浸透」86.2%

「自社従業員への取組の浸透」は86.2%で、今回の設問では最も高い割合でした。

企業規模別では、大企業92.7%、中堅企業87.0%、その他企業83.2%です。

この設問は複数回答で、対象は「リスクが発生した時の対応を従業員に浸透させ、実効性を高める取組を実施している企業」です。

したがって、「すべての企業の86.2%が従業員への浸透を課題としている」という意味ではありません。

2位は「取組時間・人員の確保」48.4%

2番目は「取組時間・人員の確保」で48.4%でした。

企業規模別では、大企業56.2%、中堅企業46.9%、その他企業46.1%となっています。

通常業務と並行してBCPの訓練や見直しを行うには、担当者や時間を確保する必要があります。

予算や経営層の関与も課題になっている

「予算の確保」は23.6%、「関係先への取組の浸透」は22.1%、「経営層の関与」は20.5%でした。

BCPを継続的に運用するには、従業員への周知だけでなく、必要な時間、人員、予算、経営層の関与などを含めて体制を整える必要があります。

備蓄は「水と食料」だけではない

今回の調査では、全従業員用の飲料水、食料品、簡易・携帯用トイレ、毛布についても備蓄状況が調べられています。

大企業では4品目すべてで備蓄率が7割を超えています。一方、中堅企業では品目によって差があり、特にトイレや毛布の備蓄率が低くなっています。

飲料水 大企業93.2%/中堅企業76.7%

全従業員用の飲料水を備蓄している企業は、大企業93.2%、中堅企業76.7%でした。

「3日分以上」の備蓄がある企業は、大企業66.1%、中堅企業43.0%です。

食料品 大企業91.8%/中堅企業70.5%

食料品は、大企業91.8%、中堅企業70.5%でした。

「3日分以上」の備蓄がある企業は、大企業65.3%、中堅企業41.4%です。

簡易・携帯用トイレ 大企業85.9%/中堅企業59.6%

簡易・携帯用トイレは、大企業85.9%、中堅企業59.6%でした。

「3日分以上」の備蓄がある企業は、大企業55.7%、中堅企業32.1%です。

毛布 大企業76.0%/中堅企業46.5%

毛布は、大企業76.0%、中堅企業46.5%でした。

毛布については、今回の調査では「何日分」という聞き方ではなく、備蓄の有無を調査しています。

4品目を一覧にすると、差が見える

品目 大企業
備蓄あり
大企業
3日分以上
中堅企業
備蓄あり
中堅企業
3日分以上
飲料水 93.2% 66.1% 76.7% 43.0%
食料品 91.8% 65.3% 70.5% 41.4%
簡易・携帯用トイレ 85.9% 55.7% 59.6% 32.1%
毛布 76.0% ― 46.5% ―

毛布には「3日分以上」の設問がないため、他の3品目とは単純に比較できません。

「3日分以上」で見ると、数字はさらに下がる

備蓄は「あるか、ないか」だけでなく、どの程度の量があるかも重要です。

たとえば中堅企業では、飲料水の備蓄ありが76.7%であるのに対し、3日分以上あるのは43.0%です。

食料品も、備蓄ありが70.5%に対して、3日分以上は41.4%となっています。

今回の調査では、3日分以上の備蓄状況まで確認されています。自社の備蓄を点検するときも、単に「備蓄あり」とするのではなく、従業員数に対して何日分あるのかまで確認すると、実際の備えの状況が分かりやすくなります。

従業員以外の備えと、社外への広がり

企業の備蓄は、従業員だけを対象に考えるとは限りません。

内閣府の令和7年度調査では、何らかの備蓄を行っている企業のうち、従業員以外の帰宅困難者に提供できる余分な備蓄を持っている企業は、全体の3割程度でした。

社外の人の分まで持っている会社は、3割ほど

大規模災害時には、来客や取引先など、従業員以外の人が社内に留まるケースも考えられます。

そのため、事業所の立地や周辺の状況によっては、従業員以外への対応も含めて備蓄を検討する必要があります。

サプライチェーン対策は大企業約5割、中堅企業約2割

サプライチェーンの強靱化に取り組んでいる企業は、大企業で約5割、中堅企業で約2割でした。

具体的な取組では、「仕入先の複数化」「仕入先への確認(リスクコミュニケーション)」などが上位となっています。

また、事業継続を目的とした代替戦略については、現在検討中の企業を含めると、大企業では75.6%、中堅企業では49.2%が取り組んでいる、または検討していると回答しています。

保険に入っていても、建物・設備一式は6割と4割

損害保険・共済について、大企業・中堅企業とも「いずれも未加入」と回答した企業は1割未満でした。

一方、建物・設備一式を補償対象とする損害保険・共済に加入している企業は、大企業で約6割、中堅企業で約4割でした。

保険に加入しているかだけでなく、どの資産が補償対象になっているかを確認することも、事業継続を考えるうえで重要です。

企業が重視しているリスクは何か

今回の調査では、リスクを具体的に想定して経営を行っている、または現在検討中の企業に、重視しているリスクを尋ねています。

その中で最も多かったのは「地震」でした。

地震が最も多く挙げられている

「地震」を重視する企業は全体で91.4%でした。

企業規模別では、大企業96.7%、中堅企業92.2%です。

ただし、この数字は「すべての企業の91.4%がBCPで地震を想定している」という意味ではありません。リスクを想定した経営を行っている、または現在検討中の企業が対象です。

感染症は59.3%

感染症は59.3%でした。前回調査では66.9%で、7.6ポイント低下しています。

この数字の変化だけから、感染症を重視する企業が減った理由まで判断することはできません。

ただ、リスクの重視度は調査時点によって変化します。すでにBCPを策定している企業でも、数年前に作った想定が現在の事業環境と合っているかを確認するきっかけになります。

火災・爆発49.5%、洪水47.9%

「火災・爆発」は49.5%、「洪水(津波以外)」は47.9%、「津波」は42.8%でした。

自然災害については、自社の所在地や拠点ごとのハザードマップを確認することで、想定すべきリスクを具体化できます。

業種別で見ると、差はかなり大きい

内閣府の令和7年度調査では、10業種についてBCPの策定率を比較しています。

策定済みの割合は、金融・保険業82.2%、建設業75.7%、製造業66.3%などとなっています。

金融・保険業82.2%、建設業75.7%、製造業66.3%

概要版に掲載されている10業種では、金融・保険業が82.2%、建設業75.7%、製造業66.3%となっています。

一方、不動産業・物品賃貸業は36.9%、宿泊業・飲食サービス業は41.0%、小売業は47.9%でした。

業種によって策定率には差がありますが、業種ごとに事業内容やリスク、必要となる対策が異なるため、数字だけで業種間の取組状況を評価することはできません。

小売業47.9%、宿泊業・飲食サービス業41.0%

小売業は前回の34.7%から47.9%へ、宿泊業・飲食サービス業は27.2%から41.0%へ上昇しました。

今回の10業種では、7業種で策定率が前回より上昇しています。

10業種の一覧で見る

業種 令和5年度 令和7年度 増減
金融業、保険業 76.6% 82.2% +5.6ポイント
建設業 63.4% 75.7% +12.3ポイント
製造業 58.3% 66.3% +8.0ポイント
情報通信業 53.8% 57.9% +4.1ポイント
卸売業 42.8% 50.0% +7.2ポイント
サービス業 56.7% 49.6% ▲7.1ポイント
運輸業、郵便業 66.2% 48.8% ▲17.4ポイント
小売業 34.7% 47.9% +13.2ポイント
宿泊業、飲食サービス業 27.2% 41.0% +13.8ポイント
不動産業、物品賃貸業 43.7% 36.9% ▲6.8ポイント

下がった業種、3割に届かない業種もある

10業種すべての策定率が上昇したわけではありません。

前回調査から低下したのは、運輸業・郵便業、サービス業、不動産業・物品賃貸業です。

特に運輸業・郵便業は66.2%から48.8%へ17.4ポイント低下しています。

なお、隔年で行われる調査では、毎回同じ企業に回答を求めているわけではありません。そのため、前回からの増減には、回答企業の構成なども影響します。

1回の調査結果だけで業種全体の傾向を断定するのではなく、複数回の推移として見ることも重要です。

また、今回の詳細な業種分類では、策定率が3割未満となっている業種もあります。自社と同じ業種の数字を確認することで、より具体的な比較ができます。

進んでいる会社と、そうでない会社の差はどこに出たか

企業規模によって、すべての項目に同じような差があるわけではありません。

差が小さい項目と、大きい項目がある

たとえば、地震を重視する割合は大企業96.7%、中堅企業92.2%で、大きな差はありません。

一方、毛布の備蓄率は大企業76.0%、中堅企業46.5%で、29.5ポイントの差があります。

サプライチェーン対策や事業継続のための代替戦略についても、大企業と中堅企業の間で差が見られます。

「何を想定するか」と「どう備えるか」は別に見る

地震などのリスクを重視している割合が高くても、具体的な備えが同じ水準になっているとは限りません。

BCPを考えるときは、「どのリスクを想定しているか」と「そのリスクに対して、どのような対策を実施しているか」を分けて確認することが重要です。

たとえば地震を想定するのであれば、従業員の安全確保、備蓄、情報システム、重要業務、サプライチェーンなど、具体的な項目まで落とし込んで確認します。

いま数字が動いているのは、どの層か

今回の調査では、中堅企業のBCP策定率が前回の45.5%から54.8%へ9.3ポイント上昇しました。

一方、大企業は76.4%から75.8%へ0.6ポイント低下しています。

中堅企業は50%を超えた

今回の中堅企業の策定率は54.8%となり、50%を超えました。

内閣府の調査報告書では、南海トラフ地震などの大規模地震防災対策に関する基本計画等において、「事業継続計画を策定している大企業の割合を100%(全国)に近づけることを目指す。また、中堅企業の割合50%(全国)以上を目指す」という目標が示されていることを説明しています。

ただし、これは企業に一律の法的義務としてBCP策定を求める規定ではありません。国が掲げる政策上の目標として位置付けられています。

前回45.5%から9.3ポイントの上昇

中堅企業は、令和5年度の45.5%から令和7年度には54.8%となりました。

大企業については、令和5年度76.4%から令和7年度75.8%となっています。

BCP策定率は調査年度によって変化しています。自社の取組状況を考えるときは、最新の数字だけでなく、過去からの推移も確認すると現在の位置を把握しやすくなります。

18年の推移で見ると、長期的には上昇

内閣府の調査は平成19年度から隔年で実施されています。

大企業の策定率は平成19年度の18.9%から令和7年度には75.8%へ、中堅企業は12.4%から54.8%へ上昇しています。

ただし、毎回同じ幅で上昇してきたわけではありません。調査年度によって増減があり、今回も大企業は前回からわずかに低下しています。

BCP策定率を見るときは、単年の数字だけでなく、こうした長期的な推移も合わせて確認するとよいでしょう。

BCP策定率の数字を、自社の取組につなげる

ここまで見てきた数字は、「何%の会社がBCPを作っているか」を知るだけのものではありません。

自社の規模や業種と比較し、策定状況だけでなく、備蓄や従業員への浸透、サプライチェーンなどの具体的な取組まで確認することで、自社の現在地を把握できます。

まずは自社の数字を確認する

最初に確認したいのは、次の3点です。

  • 自社の企業規模に近いBCP策定率
  • 自社の業種のBCP策定率
  • 自社の備蓄や災害時対応が、実際に機能する状態になっているか

全国平均と比べるだけではなく、自社に近い条件の数字を見ることがポイントです。

「策定率」と「実効性」は別に考える

BCPの策定率が高くても、それだけで災害時の対応が十分だと判断することはできません。

今回の調査でも、BCP策定率とは別に、従業員への取組の浸透、備蓄、サプライチェーン対策、代替戦略などが調査されています。

「BCPがあるか」だけでなく、「必要な人が内容を知っているか」「実際に使える状態か」「定期的に確認しているか」まで見ていくことが重要です。

最初からすべてを完成させなくてもよい

BCPの策定をこれから始める場合は、すべてのリスクや業務を一度に整理する必要はありません。

まずは自社の重要な業務を確認し、災害時の連絡方法や従業員の安全確保、備蓄など、優先度の高い項目から整理する方法があります。

一度作ったら終わりではなく、訓練や点検を通じて内容を確認し、必要に応じて見直していくことも大切です。

よくある質問

Q. BCPの策定率はどれくらいですか?

A. 内閣府の令和7年度調査(令和8年3月公表)では、「策定済みである」と回答した割合は、大企業75.8%、中堅企業54.8%、その他企業52.1%、全体56.6%でした。

Q. 業種別のBCP策定率について教えてください

A.BCPの策定率は、業種によっても違いがあります。

内閣府の令和7年度「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、10業種についてBCPの策定状況を調査しています。

令和7年度の策定率と、前回の令和5年度からの変化を一覧にすると、次のようになります。

業種 令和5年度 令和7年度 増減
金融業、保険業 76.6% 82.2% +5.6ポイント
建設業 63.4% 75.7% +12.3ポイント
製造業 58.3% 66.3% +8.0ポイント
情報通信業 53.8% 57.9% +4.1ポイント
卸売業 42.8% 50.0% +7.2ポイント
サービス業 56.7% 49.6% ▲7.1ポイント
運輸業、郵便業 66.2% 48.8% ▲17.4ポイント
小売業 34.7% 47.9% +13.2ポイント
宿泊業、飲食サービス業 27.2% 41.0% +13.8ポイント
不動産業、物品賃貸業 43.7% 36.9% ▲6.8ポイント

令和7年度の策定率だけを見ると、金融業・保険業82.2%、建設業75.7%、製造業66.3%などとなっています。

一方、前回の令和5年度からの変化を見ると、小売業は34.7%から47.9%へ、宿泊業・飲食サービス業は27.2%から41.0%へ上昇しました。

反対に、運輸業・郵便業は66.2%から48.8%へ低下しています。

このように、現在の策定率だけでなく、前回調査からどのように変化したかを見ることで、業種ごとの推移も確認できます。

自社と同じ業種の数字を確認する

自社のBCP策定状況を考えるときは、全体の56.6%という数字だけを見るのではなく、自社と同じ業種の数字も確認してみましょう。

ただし、策定率が高い業種だからといって、その業種のBCPが一律に充実しているという意味ではありません。業種によって事業内容や災害時のリスク、必要となる対策は異なります。

策定率は、自社がどの程度BCPに取り組んでいるかを考える際の一つの参考値として見るとよいでしょう。

Q. 企業がBCPを作らない理由は何ですか?

A. 内閣府の令和7年度調査で「策定を予定していない」と回答した企業では、「策定する人材が確保できない」が36.4%、「策定に必要なスキルやノウハウがない」が32.6%で上位でした。「BCPは重要と考えていない」は6.7%でした。複数回答のため、理由が一つだけという意味ではありません。

Q. 「その他企業」は中小企業のことですか?

A. いいえ。内閣府の調査では「大企業」「中堅企業」「その他企業」という独自の企業規模区分を使用しています。「その他企業」を、そのまま中小企業と読み替えることはできません。

Q. BCPを作れば、それだけで十分ですか?

A. BCPの策定は事業継続の取組の一つです。実際に機能させるためには、従業員への周知、訓練、備蓄、代替手段の確保、点検や見直しなども重要になります。

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