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建設業のBCPと事業継続力認定|整備局ごとに違う条件と目標時間

公開日 2026.09.16 最終更新 2026.09.24 読了目安 13分
災害のあとの道路。手前に白いヘルメットと黄緑の安全ベストの人が後ろ姿で立ち、片手を上げて合図している。奥で黄色い重機ががれきをすくっている。
目次

BCP(事業継続計画)の記事はたいてい「目標復旧時間を決めましょう」と書きます。何時間にするかは自社で決めてください、と。

ところが建設業には、その時間が外から数字で示されている場面があります。国土交通省の地方整備局が行っている「災害時の事業継続力認定」です。

ただし、ここで注意したいのが、建設業のBCP認定制度が全国共通の一つの制度ではないということです。地方整備局ごとに制度の運用や認定区分、申請時期などが異なります。

この記事では、関東地方整備局の制度を中心に、実際に数字が設定されている確認項目を見ながら、中部・近畿地方整備局との違いも整理します。

関東地方整備局の確認項目では、夜間・休日に地震が起きた場合、施工中の現場を確認するまで12時間以内、行政への連絡調整まで6時間以内、災害協定の業務に取りかかるまで1日以内という目標が示されています。

そしてもう1つ。この認定は入札の評価にも関わってきます。ただし「認定を取れば必ず加点される」と言い切れる制度ではありません。そこも含めて整理します。

この記事でわかることは、次の5点です。

  • 認定制度は地方整備局ごとに動いていて、全国共通ではない
  • 関東地方整備局の確認項目では、重要業務3つと目標時間が数字で示されている
  • 参集にかかる時間は、関東地方整備局のガイドラインでは徒歩を時速2キロとして計算する
  • 入札の評価項目になる場合があるが、配点や扱いは工事の方式によって違う
  • 認定期間や優良認定なども、整備局によって違う

認定は、地方整備局ごとに別の制度です

国土交通省の地方整備局では、災害時の事業継続力を備えた建設会社を認定する制度が設けられています。

ただし、認定の区分、申請時期、認定期間、評価項目などは、すべて同じではありません。

「建設業のBCP認定」とひとまとめにせず、自社が工事を受ける地方整備局の制度を確認することが必要です。

3つの整備局を並べる

たとえば、関東・中部・近畿地方整備局を比べると、制度の違いが見えてきます。

項目 関東地方整備局 中部地方整備局 近畿地方整備局
制度 災害時の基礎的事業継続力の認定 災害時の事業継続力認定 災害時建設業事業継続力認定
認定区分 認定 認定・優良認定 認定
特徴 重要業務や参集時間などを確認 通常の認定に加え、優良認定の制度がある 新規・更新の申込み時期などが独自に設定されている

中部地方整備局では、令和8年度からも通常の認定に加えて「優良認定」の受付が行われています。近畿地方整備局でも、令和8年度の新規申込みを前期・後期に分けて受け付けています。

つまり、他の地方整備局の資料を見て「建設業の認定はこういうものだ」と判断すると、申請時期や評価項目を間違える可能性があります。

認定期間も同じではありません

認定を取ったあとも、ずっと有効というわけではありません。

たとえば近畿地方整備局では、令和8年度の更新認定から認定期間が5年となる一方、新規認定は前期なら2年6か月、後期なら2年とされています。

このように、認定期間も整備局によって違うため、「建設業BCP認定は○年間有効」と一律に覚えるのは避けたほうが安全です。

取って終わりではなく、更新の時期まで含めて管理する必要があります。

守る仕事が、3つに決められている

工事現場。白い仮囲いの手前にある足場の台の上に、黄色いヘルメットが一つ置かれている。奥に小型の重機が一台止まっている。

ここからは、関東地方整備局の制度を見ていきます。

関東地方整備局のガイドラインでは、重要業務として次の3つが確認項目に入っています。

  • 施工中現場の被害状況確認・二次災害防止
  • 関係する行政機関に対しての連絡調整
  • 災害協定業務の着手

それぞれについて、誰が担当するのか、どの班が受け持つのかを決めておくことも確認されます。

「何を守るか」を会社だけで自由に決める制度ではありません

一般的なBCPでは、何を優先して復旧させるのかは会社自身が決めます。

売上の大きい事業なのか、止まると顧客への影響が大きい事業なのか。そこには経営判断が入ります。

一方、関東地方整備局の事業継続力認定では、確認すべき重要業務が具体的に示されています。

これは、一般的なBCPと認定制度の大きな違いです。

ただし、これは建設会社のすべてのBCPで重要業務がこの3つに限定されるという意味ではありません。あくまで、関東地方整備局の認定制度における確認項目です。

目標時間まで数字で示されています

重要業務 夜間・休日に起きた場合の目標
施工中現場の被害状況確認・二次災害防止 12時間以内
関係する行政機関に対しての連絡調整 6時間以内
災害協定業務の着手 1日以内

行政への連絡調整が6時間以内、施工中現場の確認が12時間以内、災害協定業務の着手が1日以内です。

一般的なBCPでは、自社の事業影響度などをもとに目標復旧時間を設定します。それに対して、この認定制度では、確認項目として具体的な目標時間が示されています。

ただし、ここでも「建設業のRTOは12時間・6時間・1日」と一般化してはいけません。これは関東地方整備局の認定制度における確認項目です。

参集は、徒歩時速2キロで計算する

関東地方整備局のガイドラインでは、指揮命令系統図に名前のある人について、住まいから拠点や代替拠点までの距離、参集にかかる時間、どこへ集まるか、どの班に入るかなどを確認する考え方が示されています。

その際、参集時間は徒歩を時速2キロ、自転車を時速5キロとして計算します。

10キロなら、徒歩で5時間です

たとえば会社から10キロ離れた場所に住んでいる人の場合、徒歩時速2キロで計算すると5時間です。

距離 徒歩(時速2km) 自転車(時速5km)
5km 2時間30分 1時間
10km 5時間 2時間
20km 10時間 4時間
30km 15時間 6時間

この数字を、先ほどの「行政への連絡調整6時間以内」という目標と並べてみます。

たとえば、担当者が会社から10キロ離れた場所にいて、発災後に徒歩で参集する想定なら、単純計算で5時間かかります。

「担当者が会社に来てから連絡する」という体制では、6時間以内という目標に余裕がありません。

だからこそ、参集する人だけでなく、参集できない場合に誰が代わるのかまで考える必要があります。

名簿を作るところから始まる

対象となる人について、誰がどこに住んでいて、何キロあって、何時間かかって、どこへ集まり、どの班に入るのか。

これは災害が起きてから調べることではありません。

平時に確認しておく必要があります。

そして、居住地の情報は、参集だけでなく、従業員の帰宅支援や分散帰宅を考えるときにも活用できます。

対応拠点は、建てた年まで確認する

関東地方整備局のガイドラインでは、対応拠点や代替拠点について、施設名、拠点の種別、構造、階数、建築時期、耐震診断・補強の有無や結果、目視による異常の把握などを確認項目としています。

昭和56年6月という線

その中には、建築時期が昭和56年6月以前かどうかという確認項目があります。

これは旧耐震基準の時期との関係を確認するためのものです。

ただし、「昭和56年6月以前なら危険」「それ以降なら安全」と単純に判断するものではありません。実際の耐震性は、建物の構造や耐震診断、補強の状況などによって確認する必要があります。

「把握している」で終わらないところ

昭和56年6月以前に建てられた建物や、耐震診断で問題が確認されている場合には、耐震工事や診断の予定について記載する項目があります。

つまり、単に「古い建物です」と把握するだけではなく、必要な対応をどうするのかまで計画に入れる考え方です。

BCPでは、被害を想定するだけでなく、そこから実際の対策につなげることが重要です。

入札の評価項目になっている。ただし配点は方式による

建設業の事業継続力認定が注目される理由の一つが、公共工事の入札評価との関係です。

関東地方整備局の令和8年度の総合評価落札方式では、「災害時の基礎的事業継続力の認定」が評価項目として扱われる方式があります。

「取れば必ず加点」とは言えません

ここは特に注意が必要です。

入札方式によって評価項目や配点が違うため、「認定を取れば必ず○点加点される」と一律に説明することはできません。

たとえば、関東地方整備局の令和8年度資料では、方式によって認定の扱いが異なります。令和8年8月1日以降に公告される案件から適用される資料では、災害時の基礎的事業継続力の認定について2点とされる評価方式もあります。

したがって、入札への影響を確認する場合は、「認定を持っているか」だけではなく、その工事の評価方式まで確認する必要があります。

整備局によって、評価のされ方も違います

近畿地方整備局では、災害時建設業事業継続力の認定について、総合評価落札方式における評価との関係が示されています。

一方で、中部地方整備局では、通常の認定に加えて優良認定という別の制度が設けられています。

同じ「建設業のBCP認定」という言葉であっても、制度の内容や評価方法まで同じではありません。

認定を持っていても、入札評価につながらない場合があります

認定を取得したことと、実際の入札で評価されることは別です。

関東地方整備局の総合評価落札方式では、認定証の名義や提出方法などによって評価対象にならないケースがあります。

たとえば、入札に参加する者とは異なる支店の認定証を提出するケースや、経常建設共同企業体で構成員の一部しか認定を持っていないケース、認定証の写しを提出していないケースなどです。

確認すること 注意点
認定証の名義 入札に参加する者との関係を確認する
共同企業体での参加 構成員に関する条件を確認する
認定証の提出 必要書類として提出できているか確認する
認定の有効期間 審査の基準日に有効か確認する

認定を取得したら、それで終わりではありません。

実際に入札で評価を受ける場合は、その工事の入札公告・評価基準・提出書類まで確認することが必要です。

中部には「優良認定」がある

中部地方整備局には、通常の認定とは別に「優良認定」があります。

令和8年度も優良認定の受付が行われており、通常の認定とは別の確認項目が設けられています。

認定の先に、もう一段ある

優良認定では、通常のBCPを作っているかだけではなく、防災対応力を高める取組、地域・団体間の連携、BCPの改善など、より具体的な取組が確認されます。

つまり、単に「計画を作ったか」だけではなく、計画を運用し、改善しているかという側面も確認する制度になっています。

ここも整備局差です

自社が中部地方整備局管内で工事を受けるのであれば、通常の認定だけでなく優良認定という選択肢があることを知っておく必要があります。

逆に、関東地方整備局の制度だけを見ていると、他の整備局にある制度を見落とします。

建設業のBCPが、他の業種と違うところ

建設業のBCPには、他の業種と少し違う特徴があります。

自社の事業を継続するだけではなく、自社が施工しているものや、施工したものが災害時に周囲へ与える影響まで考える必要があるからです。

施工中のものが、二次災害につながる可能性がある

中部地方整備局のBCP策定サンプルでは、基本方針の例として、施工中の建設物の倒壊などによる近隣への二次災害の防止や、自社が施工した物件の被災状況の把握などが挙げられています。

建設業では、災害が発生したあとに「自社の建物が無事か」だけを確認すればよいわけではありません。

施工中の現場に危険が残っていないか、施工した建物に被害がないか、顧客にどのような影響が出ているか。

こうした確認も、事業継続や地域の復旧に関わってきます。

災害後に仕事が増える側でもある

建設業には、災害後に応急復旧などの仕事が増えるという側面もあります。

災害協定を締結している会社であれば、自社も被災している中で、道路や施設などの復旧を求められることがあります。

そのため、建設業のBCPでは「自社の事業を止めない」だけでなく、災害時に求められる応急対応をどう継続するかも考える必要があります。

まず手を付ける4つ

1. どの整備局の制度かを確かめる

まず、自社が対象となる地方整備局を確認してください。

関東・中部・近畿など、どの整備局の制度を使うのかで、申請時期や確認項目、認定区分などが変わります。

2. 重要業務と目標時間を、自社の計画と突き合わせる

関東地方整備局の制度を利用する場合は、施工中現場の被害状況確認・二次災害防止、行政への連絡調整、災害協定業務の着手について、それぞれの目標時間を確認します。

夜中や休日に発災した場合でも、本当にその時間で動けるのかを確認してください。

3. 名簿に、距離と時間を入れる

指揮命令系統図に名前がある人について、居住地からの距離と参集時間を確認します。

関東地方整備局のガイドラインでは、徒歩時速2キロ、自転車時速5キロとして計算します。

その結果を6時間・12時間などの目標時間と照らし合わせると、どこに人員上の問題があるのか見えやすくなります。

4. 認定証を、どの名義で取るか確認する

複数の支店がある場合は、どの名義で認定を受けるのかを確認してください。

また、認定を入札評価につなげる場合は、認定証の提出方法や入札参加者との関係なども確認します。

認定制度を利用することが決まっているなら、BCPを作る段階から「認定を取るための計画」と「実際に災害時に使う計画」が食い違わないようにしておくことが重要です。

今日できることを1つ挙げるなら、まず指揮命令系統図に載っている人の居住地から、参集にかかる時間を計算してみることです。

それを目標時間と比べるだけでも、今のBCPにどこまで余裕があるのかが見えてきます。

よくある質問

Q. 建設会社の事業継続力認定とは何ですか

A. 国土交通省の地方整備局が、災害時に事業を継続するための基礎的な力を備えた建設会社を認定する制度です。

ただし、地方整備局ごとに制度が運用されているため、全国共通の一つの制度ではありません。

自社が工事を受ける地方整備局の制度・申請要領・評価要領を確認することが重要です。

Q. 認定を取ると入札で有利になりますか

A. 入札の評価項目として扱われる場合がありますが、すべての工事で同じように評価されるわけではありません。

たとえば関東地方整備局では、令和8年度の総合評価落札方式において「災害時の基礎的事業継続力の認定」が評価項目として扱われる方式がありますが、配点や扱いは方式によって異なります。

そのため、「認定を取れば必ず○点」という考え方ではなく、実際に参加する工事の評価方式を確認する必要があります。

Q. BCPに書くべき重要業務は決まっていますか

A. 一般的なBCPでは、自社の重要業務を自社で整理します。

一方、関東地方整備局の事業継続力認定では、「施工中現場の被害状況確認・二次災害防止」「関係する行政機関に対しての連絡調整」「災害協定業務の着手」の3つが確認項目に含まれています。

これは関東地方整備局の認定制度上の確認項目であり、建設業全体のBCPで重要業務がこの3つに限定されるという意味ではありません。

Q. 認定はいつまで有効ですか

A. 地方整備局によって異なります。

たとえば近畿地方整備局では、令和8年度の更新認定から認定期間が5年となる一方、新規認定は前期・後期で期間が異なります。

関東地方整備局など別の整備局についても、最新のガイドラインで確認してください。

Q. 支店ごとに認定を取らないといけませんか

A. 一律に「支店ごと」と考えるのではなく、利用する地方整備局の制度と、入札での評価条件を確認してください。

特に入札評価につなげる場合は、認定証の名義と入札参加者との関係が重要になります。

複数の支店がある会社や、共同企業体で入札する会社は、認定をどの名義で取得し、どの工事で使用するのかを事前に確認しておくと安心です。

出典

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