BCP COLUMN 職場の備蓄と備え

職場の備蓄は何をどれだけ?携帯トイレと毛布の必要数

公開日 2026.09.16 最終更新 2026.10.01 読了目安 14分
倉庫の白い棚。段ボール箱に入った水のペットボトルが3段に並び、右の棚には灰色の毛布が積み重ねてある。下の段に白い収納箱、手前に台車。
目次

備蓄を任されて最初に詰まるのは、品目ではありません。「で、いくつ買えばいいのか」です。水と食料はなんとなく見当がついても、携帯トイレを何回分、毛布を何枚と言われると、根拠のある数が出てきません。

この記事では、国のガイドラインや調査をもとに、職場で必要な備蓄量を考える方法を整理します。

ただし、ここで使う「1人5回」「3日分」「1人2枚」といった数字は、すべて企業に一律で義務付けられた基準ではありません。どの資料が、誰を対象にした数字なのかを確認しながら、自社の備蓄量を考えていくことが大切です。

この記事では、次の4点を整理します。

  • 携帯トイレの必要数を「人数×1日5回×日数」で計算する方法
  • 職場の備蓄をまず3日分から考える理由
  • 毛布の必要数を考えるときに「1人1枚」と「1人2枚」がある理由
  • 従業員以外の来客・取引先などの分をどう考えるか

その数字は、誰に向けた基準か

職場の備蓄量を考えるとき、最初に注意したいのが「どの資料の数字なのか」です。

たとえば内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」には、携帯トイレの必要数を考える際の「1人1日5回」という計算方法や、「まずは3日分を目標に」という考え方が示されています。

一方、このガイドラインは避難所を対象としたものです。企業に対して、携帯トイレを「1人1日5回×3日分」備蓄することを直接義務付けたものではありません。

企業については、内閣府の「事業所における帰宅困難者等対策ガイドライン」で、発災後3日間は従業員等を施設内に待機させることを前提として、備蓄量の目安を3日分としています。

つまり、企業の備蓄を考えるときは、企業向けのガイドラインと、避難所向けのガイドラインを分けて見ることが重要です。

企業向けの必要量を考えるときの基本

内閣府の「事業所における帰宅困難者等対策ガイドライン」では、発災後3日間の施設内待機を前提として、水・食料・毛布・簡易トイレ・衛生用品などの備蓄を考えるよう示しています。

備蓄量の目安は3日分ですが、同ガイドラインでは、災害の長期化に備えて3日分以上の備蓄も検討すること、さらに来社中の顧客や取引先など、従業員以外の帰宅困難者についても、例えば10%程度を余分に備蓄することを検討するとしています。

「3日分」は、企業にとって考え始める際の基本的な目安として捉えるとよいでしょう。

携帯トイレは「1人1日5回」から計算する

内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」では、携帯トイレ・簡易トイレの必要数を次のように計算しています。

  • 1日に必要な便袋の数 = 想定する人数 × 5回
  • 備蓄目標数 = 1日分の枚数 × 何日分そろえるか

この「1人1日5回」という数字は、避難所における必要数を算出するためのものです。企業に義務付けられた数字ではありませんが、自社の備蓄量を具体的に計算する際の根拠のある目安として利用できます。

誰を人数に入れるか

企業で計算する場合は、単純に「在籍する従業員数」を入れるのではなく、災害発生時に社内に残る可能性がある人数を考えることが大切です。

たとえば交代勤務の事業所なら、最も多くの人が勤務している時間帯を想定します。在宅勤務が多い会社なら、実際の出社人数や災害発生時に出社している可能性のある人数をもとに考えます。

従業員50人の会社で計算してみる

従業員50人が社内に残ると仮定し、3日分を計算してみます。

  • 1日当たり:50人 × 5回 = 250回分
  • 3日分:250回分 × 3日 = 750回分

この場合、携帯トイレは750回分が計算上の目安になります。

ただし、これは避難所向けの計算式を企業の備蓄量を考える際に当てはめたものです。内閣府が「従業員50人なら750回分」と定めているわけではありません。

人数別にすると、次のようになります。

社内に残り得る人数 携帯トイレ 1日分 携帯トイレ 3日分
10人 50回分 150回分
30人 150回分 450回分
50人 250回分 750回分
100人 500回分 1,500回分
300人 1,500回分 4,500回分

いずれも、内閣府の「1人1日5回」という計算式をもとに、3日分として計算したものです。

計算式の出典:内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)

携帯トイレの必要数の出し方×=社内に残り得る人数50人1日の回数5回備蓄目標(3日分)750回分1日分 250回分 × 3日毛布は「人数 × 2枚」。50人なら100枚。
計算式の出典:内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」令和6年12月改定

「枚」ではなく「回分」で数える

携帯トイレは製品によって1箱あたりの入り数が異なります。そのため、備蓄台帳では箱数だけでなく、何回分あるのかを記録しておくと管理しやすくなります。

「10箱ある」だけでは必要量を判断できませんが、「500回分ある」とすれば、50人の1日分に相当する250回分を上回っていることがすぐにわかります。

備蓄台帳を作るなら、品目・回分・期限・置き場所などを記録しておくと、点検や入れ替えにも使えます。

オフィスのトイレの個室。扉が開いていて、便器の横の棚に、水色の帯が入った白い箱が3つ重ねて置かれている。棚の下にトイレットペーパー、奥に観葉植物。

携帯トイレと簡易トイレは、別物

「携帯トイレ」と「簡易トイレ」は、似た名前ですが役割が違います。

携帯トイレは、既存の便器に取り付ける

携帯トイレは、既存の洋式便器などに便袋を取り付けて使うタイプです。水がなくても使用でき、便袋の中で排泄物を処理します。

そのため、使うには便器などの「座って使える場所」が必要です。個室そのものが被害を受けて使えない場合には、携帯トイレだけを備蓄していても使用できません。

簡易トイレは、便器そのものを用意する

簡易トイレは、便座や便器と排泄物を処理するための袋などを組み合わせて使うタイプです。段ボールなどを組み立てて使うものや、ポータブルトイレ型などがあります。

既存のトイレが使えない場合に備えて、携帯トイレだけでなく、簡易トイレや仕切りなども含めて考えておくと安心です。

仮設トイレだけに頼らない

災害時には、自治体などによって仮設トイレやマンホールトイレが整備・設置される場合があります。一方で、被災状況や交通事情などによって、必要な場所にすぐ設置できるとは限りません。

企業としては、外部からの支援や復旧だけを前提にせず、発災直後から一定期間を自社で対応できるよう、携帯トイレや簡易トイレなどを準備しておくことが重要です。

使えるトイレは、水と下水の状態で決まる

災害時は、断水しているかどうかだけでなく、排水設備や下水道などが使用できるかも確認する必要があります。

水が出ていても、下水道や排水設備に被害があれば、水洗トイレを使用できない場合があります。

状態 既存のトイレ 対応の例
水が出る・排水設備も使用できる 使用できる 通常どおり使用。ただし状況が変わる可能性を考えて備蓄は確保する
水が出ない 流せない 既存の便器に携帯トイレを取り付ける
水は出る・排水設備が使用できない 流してはいけない 携帯トイレを使用し、水洗トイレの使用を止める
個室や便器が使用できない 使用できない 簡易トイレや仕切りなどを使用する

特に注意したいのが、水は出るのに排水側が使えないケースです。見た目にはいつもどおり使えそうでも、排水設備の安全が確認できなければ、使用を止める判断が必要になります。

「まずは3日分」の、その先

内閣府の事業所向けガイドラインでは、発災後3日間は従業員等を施設内に待機させることを前提として、備蓄量の目安を3日分としています。

ただし、これは「3日たてば必ず復旧する」という意味ではありません。災害の規模や地域、建物の被害によっては、3日を超えて施設内での待機が必要になることもあります。

そのため、同ガイドラインでも、災害の影響が長期化する場合に備え、3日分以上の備蓄についても検討するよう示しています。

使用済みの置き場所まで含めて、備蓄

備蓄計画で見落とされやすいのが、使った後のことです。

たとえば50人が1日5回、3日間携帯トイレを使用すると、単純計算で750回分の使用済み便袋が発生します。

保管場所もあらかじめ決めておく

内閣府の避難所向けガイドラインでは、汚物の保管場所を確保することや、便袋をできる限り雨水で濡れない場所に保管することなどが示されています。

企業でも、使用済み便袋をどこに一時保管するのかを事前に決めておきましょう。

「備蓄品を買うところ」までで終わらず、使った後にどう処理するかまで決めておくことがポイントです。

責任者と当番を、平時に決めておく

災害時のトイレは、備蓄品があるだけでは十分ではありません。誰が使用状況を確認するのか、清掃や衛生管理を誰が担当するのか、使用済み便袋をどう扱うのかを決めておく必要があります。

特定の担当者だけが知っている状態にすると、その人が不在のときに対応できなくなります。複数の担当者がわかるようにしておくとともに、手順を簡単にまとめておくとよいでしょう。

また、備蓄品を選ぶときや置き場所を決めるときには、実際に使う従業員の意見も確認しておくと、災害時に使いやすい備蓄になります。

毛布は「1人2枚」と「1人1枚」がある

毛布については、資料によって「1人2枚」と「1人1枚」という数字が出てきます。これは、対象となる人や目的が違うためです。

避難所などでは「1人2枚」を前提にする資料がある

内閣府・消防庁が令和4年12月21日に出した「大規模災害時のための毛布の備蓄について」では、南海トラフ地震に備えた応急活動の計画などを踏まえ、避難者1人当たり2枚の毛布が必要となる考え方を示しています。

これは、主に自治体が避難者のために必要量を考える際の考え方です。企業の従業員用備蓄に、そのまま「1人2枚」という義務が課されているわけではありません。

事業所向けガイドラインでは「1人1枚」が目安

一方、内閣府の「事業所における帰宅困難者等対策ガイドライン」では、従業者を3日間施設内に待機させるための備蓄量の目安として、毛布は1人当たり1枚としています。

したがって、企業が従業員用の備蓄量を考える場合は、まず事業所向けガイドラインの「1人1枚」を基本にし、冬季の寒さ、空調停止、床で休む可能性など、自社の環境に応じて追加を検討するとよいでしょう。

企業の備蓄状況を見ると、毛布は後回しになりやすい

内閣府の令和7年度「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、毛布を備蓄している企業は、大企業76.0%、中堅企業46.5%でした。中堅企業では50.2%が「なし」と回答しています。

水や食料と比べると、毛布はかさばるため後回しになりやすい品目です。しかし、冬季に停電や空調停止が起き、従業員が社内で待機する可能性を考えると、必要数を一度確認しておきたい備蓄品です。

水と食料の数え方

水と食料についても、「あるかないか」だけではなく、何人が何日分使えるのかで確認することが大切です。

内閣府の令和7年度調査では、全従業員用の備蓄について「3日分以上」と回答した割合は、飲料水で大企業66.1%、中堅企業43.0%、食料品で大企業65.3%、中堅企業41.4%でした。

備蓄がある会社でも、必ずしも3日分以上を確保できているとは限りません。自社の備蓄も、箱や本数だけではなく「何人で何日分か」に換算してみましょう。

期限の入れ替えを、先に仕組みにする

備蓄は、一度購入したら終わりではありません。水や非常食には賞味期限があり、携帯トイレなどにも使用期限が設定されている製品があります。

購入日や期限を備蓄台帳に記録し、定期的に確認する仕組みを作っておきましょう。

入れ替え時期をあらかじめ決めておけば、「気づいたら期限が切れていた」という事態を防ぎやすくなります。

数だけでなく「取り出せるか」を確認する

断水と停電で、何が使えなくなるか

災害時は、断水や停電によってトイレや給水設備などが使えなくなる可能性があります。下水道や排水設備の被害によって、水が出てもトイレを使用できない場合もあります。

自社の建物について、どの設備がどの条件で使えなくなるのかを、平時に確認しておきましょう。

鍵のかかった倉庫にあると、取り出せない

備蓄品を施錠した倉庫や別棟に置いている場合は、鍵の管理者も確認しておきます。

管理者が不在だった場合や、地震によって扉が開かなくなった場合などを考え、複数の担当者が置き場所や鍵の所在を把握しておくことが大切です。

また、棚の転倒などによって通路がふさがる可能性もあります。備蓄品を一か所に集中させるのではなく、必要に応じて複数の場所に分けて保管する方法もあります。

誰が出すか、決まっているか

備蓄品の場所だけでなく、災害時に誰が配布するのかも決めておきましょう。

特定の担当者しか備蓄の場所を知らない状態では、その人が不在の場合に対応できません。少なくとも複数人が、備蓄の場所・数量・鍵の所在を把握している状態にしておくと安心です。

従業員以外の分を、どう考えるか

職場にいるのは従業員だけとは限りません。災害が発生した時間によっては、来客、取引先、配送業者、面接に来た人などが社内にいる可能性があります。

内閣府の令和7年度調査では、何らかの備蓄を行っている企業のうち、従業員以外の帰宅困難者用に余分な備蓄を用意している企業は32.6%でした。

来客や取引先が、そのまま残る

従業員数分だけを用意している場合、災害発生時に社内にいた来客や取引先の分が不足する可能性があります。

特に、店舗や来客の多い事業所では、従業員以外の人数も備蓄計画に入れておく必要があります。

上乗せ分は、来客記録から見当をつける

内閣府の事業所向けガイドラインでは、従業員分に加えて、外部の帰宅困難者のために例えば10%程度の量を余分に備蓄することも検討するとしています。

ただし、10%がすべての企業に一律に当てはまるわけではありません。受付記録や会議室の予約、店舗の来客数などから、災害時に社内に残る可能性がある社外の人数を考えてみましょう。

業種や拠点によって必要な人数は変わります。自社の実態に合わせて設定することが大切です。

自社の必要数を出す

ここまでの考え方を使うと、自社の備蓄量を具体的に計算できます。

携帯トイレ = 人数 × 5回 × 日数

避難所向けガイドラインの計算式を企業の備蓄量の目安として当てはめる場合、社内に残り得る人数に1日5回、さらに日数を掛けます。

50人で3日分なら750回分、100人なら1,500回分です。

毛布 = 人数 × 1枚を基本に考える

事業所向けガイドラインでは、従業者を施設内に待機させるための毛布は1人当たり1枚が目安です。

ただし、冬季の気温や空調の停止、床で休む可能性などによって必要量は変わります。自社の環境に応じて追加を検討しましょう。

数を出したら、置き場所と点検日を決める

必要数が出たら、次に決めるのは「どこに置くか」「誰が管理するか」「いつ点検するか」です。

備蓄は、買っただけでは十分ではありません。災害時に取り出せて、必要な人に配布できて、使い終わったものを処理できるところまで考えて、はじめて実際に使える備えになります。

まずは今ある備蓄品を、回数分・人数分・日数で数え直すところから始めてみましょう。

自社の数を自動で出す

ここまでの計算は、当社の防災備蓄シミュレーターでも行えます。従業員数や拠点数などを入力して、必要な備蓄品の数量を確認できます。

防災備蓄シミュレーターを使う

よくある質問

Q. 職場の携帯トイレは何個必要ですか?

A. 企業に一律の必要数が定められているわけではありません。内閣府の避難所向けガイドラインにある「人数×1日5回」という計算式を、自社の備蓄量を考える際の目安として利用できます。50人が3日間社内に残ると仮定すれば、750回分です。

Q. 会社の備蓄は何日分そろえればよいですか?

A. 内閣府の事業所向けガイドラインでは、発災後3日間の施設内待機を前提として、備蓄量の目安を3日分としています。また、災害の長期化に備えて、3日分以上の備蓄も検討するとしています。

Q. 毛布は1人何枚必要ですか?

A. 企業の従業員用備蓄については、事業所向けガイドラインで1人1枚が目安とされています。一方、自治体が避難所などの必要量を考える資料では1人2枚という考え方もあります。目的と対象が違うため、数字をそのまま混同しないことが重要です。

Q. 職場の備蓄で見落とされやすいものは何ですか?

A. 携帯・簡易トイレや毛布は、水・食料に比べて備蓄率が低い傾向があります。内閣府の令和7年度調査では、毛布の備蓄率は大企業76.0%、中堅企業46.5%、簡易・携帯用トイレは大企業85.9%、中堅企業59.6%でした。

出典

SIMULATION防災備蓄シミュレーター社員の人数・拠点数を入れるだけで必要な備蓄品が出ます。結果はPDFで保存できます。
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