BCP COLUMN BCPの基本

BCPとBCMの違い|作っても回らない理由

公開日 2026.09.16 最終更新 2026.09.25 読了目安 14分
会議机の上で開かれた黒いリングファイル。中の紙には図面とグラフが載っている。左右から伸びた手が別々のページを指し、1人はペンを持っている。
目次

BCPは「事業を止めない・早く復旧するための計画」、BCMは「その計画を作り、訓練・点検・改善まで続けていく仕組み」です。

つまり、BCPが「何をするか」を決めた計画なのに対し、BCMは「その計画が実際に機能するよう、平常時から継続的に管理・改善する活動」と考えると分かりやすいでしょう。

BCPを作っただけで終わってしまうと、担当者や連絡先が変わったり、事業内容や設備が変わったりしたときに、計画が実態と合わなくなることがあります。

そこで重要になるのがBCMです。この記事では、BCPとBCMの違いから、防災活動との違い、経営者が関わる理由、実際に始めるときの考え方まで整理します。

この記事でわかることは、次の4点です。

  • BCPは計画、BCMは事業継続の取組を継続的に管理・改善する活動
  • 防災活動とBCMでは、考える対象や目的に違いがある
  • BCMでは、重要な事業・業務をどのように継続・復旧するかを経営として考えることが重要
  • 最初から完璧を目指すのではなく、できることから始めて改善していく考え方が示されている

BCPとBCMは、別のもの

内閣府「事業継続ガイドライン」(令和5年3月)では、BCP(Business Continuity Plan)を、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための「方針、体制、手順等を示した計画」としています。

一方、BCM(Business Continuity Management)は、BCPの策定や維持・更新だけでなく、事業継続のための予算・資源の確保、対策の実施、教育・訓練、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動です。

つまり、BCPが「計画」であるのに対して、BCMは、その計画を含めて事業継続の取組を継続的に回していく仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

BCPは「計画」

内閣府のガイドラインでは、BCPは何らかの不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断してもできるだけ短い期間で復旧させるための計画です。

対象となる事象には、地震などの自然災害だけでなく、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーンの途絶、突発的な経営環境の変化なども挙げられています。

ポイントは「計画」であることです。事業継続に必要な方針や体制、手順などをあらかじめ整理し、文書化します。

BCMは「回し続ける取組」

一方のBCMは、BCPを作って終わりにするのではなく、平常時から継続的に取り組む管理活動です。

内閣府のガイドラインでは、BCPの策定や維持・更新、必要な予算・資源の確保、事前対策の実施、教育・訓練、点検、継続的な改善などがBCMの活動として示されています。

また、BCMは経営レベルの戦略的な活動として位置付けられています。つまり、BCPを作ることはBCMの一部であり、それだけでBCM全体が完了するわけではありません。

BCPを作成した後も、訓練や点検、見直しなどを通じて内容を維持・改善していくことが重要です。

BCPは、BCMの一部事業継続マネジメント(BCM) 平常時から回し続ける経営レベルの活動事業継続計画(BCP)緊急時の体制と対応手順事前対策の実施計画耐震・代替拠点・備蓄など教育・訓練の実施計画社内に浸透させる見直し・改善の実施計画誰がいつ点検するか予算・資源の確保 / 点検 / 継続的な改善 / 経営者の関与計画を書くことは、この活動の一部でしかない。書いて終われば、BCMは始まっていない。
出典:内閣府(防災担当)「事業継続ガイドライン」令和5年3月の構成をもとに作成
オフィスの机に開いて置かれた紺色のリングファイル。中の紙は白紙で、小口には色とりどりの付箋が何枚も貼られている。奥の棚には同じ形のファイルが立てて並んでいる。

書いて終わりではなく、回し続けるもの

内閣府のガイドラインでは、BCMを会社全体の経営管理の一部として体系的に実施することが示されています。

そのため、すでに品質管理や安全管理などの仕組みがある会社では、それらの仕組みに事業継続の取組を組み込む方法も考えられます。

新たな仕組みを一から作ることだけが方法ではありません。既存の会議や点検、教育・訓練などに事業継続の確認を組み込むこともできます。

「計画の策定」には、BCP以外の計画もある

内閣府のガイドラインでは、「計画の策定」の章に、事業継続計画(BCP)だけでなく、事前対策の実施計画、教育・訓練の実施計画、見直し・改善の実施計画も示されています。

つまり、BCPを作るだけでなく、その計画を実際に運用するための事前対策、教育・訓練、見直し・改善まで考える構成になっています。

BCPを作成したものの、その後の訓練や見直しにつながっていない場合は、計画の内容だけでなく、こうした運用の仕組みも確認してみるとよいでしょう。

防災活動とBCMは、何が違うのか

内閣府の「事業継続ガイドライン」では、従来の防災活動とBCMについて、考え方や進め方に違いがあることが説明されています。

比較表で見る

ガイドラインの比較をもとに整理すると、次のようになります。

従来の防災活動 BCM(事業継続マネジメント)
人命の安全確保や物的被害の軽減を重視 人命の安全確保に加え、重要な事業・業務の継続や早期復旧を重視
地域で起こり得る災害を中心に検討 事業が中断する原因を幅広く検討
被害を抑え、被災した拠点を復旧することを重視 重要な事業・業務を、目標とする時間や水準まで復旧・継続することを検討
拠点ごとの対策を中心に検討 全社的・拠点横断的に検討し、取引先などとの依存関係も考慮
防災・総務・施設などの担当部門が中心となる場合がある 経営者を軸に、事業部門や管理部門などが連携して取り組む
備蓄、耐震化、二次災害防止など、被害を抑える対策 代替拠点、設備の二重化、バックアップなど、継続・復旧のための戦略も検討

大きな違いの一つは「経営判断」が入ること

非常時には、人員、設備、資金などの経営資源が平常時と同じように使えるとは限りません。

そのためBCMでは、重要な事業・業務を整理したうえで、どの業務を優先するのか、いつまでに、どの程度まで復旧させるのかなどを検討します。

たとえば、職員が十分に出社できない状況で、どの業務を優先するのか、どの取引先への供給を優先するのか、といった判断が必要になる場合があります。

こうした判断には、各部門の情報だけでなく、会社としての事業戦略や取引先との関係なども関係します。そのため、内閣府のガイドラインでは、経営者を軸とした全社的な体制でBCMに取り組むことが示されています。

優先する業務の決め方そのものは、BCPの重要業務とは?決め方の5ステップと業種別の具体例で詳しく整理しています。

防災をやめる話ではない

BCMを進めるからといって、防災活動が不要になるわけではありません。

建物の耐震化、備蓄、設備の転倒防止、二次災害の防止など、被害そのものを抑える取組は、事業継続を考えるうえでも重要です。

内閣府のガイドラインでも、防災活動とBCMには重なる部分があることが示されています。防災による被害軽減に加えて、事業を継続・復旧するための戦略を考えることがBCMのポイントです。

備蓄のように、防災活動とBCMの両方に関係する対策もあります。数量の考え方は、職場の備蓄は何をどれだけ?携帯トイレと毛布の必要数で整理しています。

BCMで特に重要な3点

内閣府の「事業継続ガイドライン」では、BCMについて、事業継続の仕組み、社内への浸透、評価・改善の仕組みが重要な要素として示されています。

国が挙げる3つ

ガイドラインでは、事業継続の取組について、次の3点が重要な要素として挙げられています。

  • 非常時にも事業を継続できる仕組みがあること
  • 事業継続の考え方や取組が社内に浸透していること
  • 取組の実効性を評価し、継続的に改善する仕組みがあること

「社内への浸透」は現在の調査でも課題

内閣府が令和8年3月に公表した「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、リスクが発生した時の対応を従業員に浸透させ、実効性を高める取組を実施している企業に対して、取組を進めるうえでの課題を尋ねています。

その結果、「自社従業員への取組の浸透」は全体で86.2%となり、大企業92.7%、中堅企業87.0%、その他企業83.2%で、いずれの規模でも最も高い項目でした。複数回答で、対象はこうした取組を実施している企業です。

つまり、BCPを作成するだけでなく、その内容を従業員に理解してもらい、実際に行動できる状態にしていくことも重要な課題になっています。

出典:内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(令和8年3月)

評価・改善の仕組みも必要

もう一つ重要なのが、計画や取組を点検し、必要に応じて見直す仕組みです。

人事異動によって担当者が変わったり、連絡先が変わったり、取引先や設備、システムなどが変更されたりすれば、以前に作ったBCPの内容が現在の状況と合わなくなることがあります。

そのため、訓練や点検で見つかった課題を計画に反映し、必要な部分を更新していくことが重要です。

どこまでやるかは、経営者が決めてよい

内閣府の事業継続ガイドラインでは、BCMの内容について、自社の事業内容や規模などに応じて、その範囲を経営者が判断してよいとしています。

範囲は自社で判断できる

すべての企業が同じ内容・規模のBCMを実施することを求められているわけではありません。

また、ガイドラインでは、大きな支出をしなくても取り組めることがあるとしています。

たとえば、優先する業務を整理する、連絡先を最新の状態にする、安否確認の方法を従業員に周知する、備蓄品の数量を確認するなど、まず社内で確認できることから始める方法があります。

「完璧を目指して躊躇するより、できることから」

内閣府のガイドラインは、初めから完璧な事業継続の仕組みを作ろうとして着手をためらうよりも、できることから始め、継続的に改善していくことを強く推奨しています。

BCMは、一度にすべてを完成させることだけが目的ではありません。自社の状況に合わせて範囲を定め、実施した内容を点検し、必要に応じて改善していくことが重要です。

中小企業向けの指針もある

中小企業庁は、「中小企業BCP策定運用指針」を公開しています。

この指針は、BCPの策定だけでなく、策定したBCPを継続的に運用することも想定した内容です。

なお、現在公開されている指針は第2版(平成24年4月改訂)です。内容を参考にする際は、現在の制度や最新の公的情報もあわせて確認するとよいでしょう。

なぜ経営者が出てこないと進まないのか

内閣府の事業継続ガイドラインでは、経営者が事業継続の取組に責任を持ち、必要な時間、人員、資金などを割り当てることが重要だとされています。

ガイドラインは、経営者の関与を重視している

BCMでは、どの事業を重要と考えるのか、どの程度の水準まで継続・復旧させるのか、どこまで対策に資源を投入するのかといった判断が必要になります。

こうした判断には、担当部門だけではなく、会社全体の経営方針や事業戦略が関係します。そのため、経営者がBCMの目的を理解し、必要な人員や時間、資金などを確保することが重要になります。

止まったときに失うのは、設備だけではない

内閣府のガイドラインでは、東日本大震災の経験を踏まえ、被害そのものが大きくなくても、事業の復旧に時間がかかることで商品やサービスを提供できなくなり、取引先や顧客への影響が生じる場合があることが示されています。

そのためBCMでは、建物や設備の被害だけを見るのではなく、事業を継続するために必要な人員、設備、情報、資金、取引先などを幅広く考える必要があります。

平常時にも関係する

事業継続の取組は、災害が起きたときだけに関係するものではありません。

たとえば、特定の従業員しか扱えない業務や、特定の取引先に依存している業務などを洗い出すことで、平常時の業務体制を見直すきっかけになることもあります。

どんな事象を想定するか

内閣府の事業継続ガイドラインでは、BCMの対象として自然災害だけでなく、感染症、事件、大事故、サプライチェーンの途絶など、事業の継続に影響を与えるさまざまな事象が想定されています。

自然災害に限らない

防災という言葉からは地震や水害などをイメージしやすいですが、BCMでは「何が起きるか」だけでなく、「事業が止まる原因は何か」という視点から考えることができます。

たとえば、主要な取引先からの供給が止まる、基幹システムが使えなくなる、重要な担当者が出勤できないといったケースも、事業継続に影響する要因になります。

そのため、自社がどのような原因で事業を継続できなくなる可能性があるのかを整理することが、BCMを考える最初の一歩になります。

被害の出方によって、計画の形が変わる

内閣府のガイドラインでは、地震などのように発生後に事業への影響が大きくなり、その後復旧していくタイプの事象と、感染症のように影響が長期化する可能性がある事象について、それぞれ異なる考え方が示されています。

前者では、低下した事業活動をどのように復旧させるかが重要になります。一方、長期化する事象では、一定の事業水準をどのように維持するかという考え方も必要になります。

同じBCPでも、想定する事象によって、必要となる対策や判断が変わることがあります。

需要が増える場合もある

事業継続を考えるときは、事業が縮小するケースだけでなく、災害などをきっかけに需要が増えるケースも考えられます。

内閣府のガイドラインでも、災害によって同業他社が被災し、自社への注文が増えることで、平常時を上回る操業度になる場合があることが示されています。

自社が供給側として重要な役割を担う可能性がある場合には、通常より需要が増えたときにどこまで対応できるかも検討しておく必要があります。

今日から始めるなら

内閣府の事業継続ガイドラインは、初めから完璧な取組を目指して着手をためらうより、できることから始めて改善を重ねることを強く推奨しています。

まず、既存の防災の取組を並べる

BCMをゼロから始める必要はありません。

消防計画、避難訓練、備蓄、設備の転倒防止など、すでに取り組んでいる防災活動を一覧にしてみましょう。

そのうえで、「誰が担当しているのか」「最後に確認したのはいつか」「実際に災害が起きたときに使える状態か」を確認すると、現在の課題が見えてきます。

次に、経営判断の層を足す

防災の取組を整理したら、事業継続の視点から次のような問いを加えます。

  • どの業務を優先するのか
  • いつまでに復旧させたいのか
  • どの程度の水準まで戻すのか
  • その判断を誰が行うのか

こうした項目を整理することで、防災による被害軽減だけでなく、事業を継続・復旧するための計画につなげられます。

回す仕組みを決める

最後に、点検や訓練、見直しをどのように行うのかを決めます。

内閣府のガイドラインは、BCMを継続的な活動として位置付けています。必ずしも全社一律の頻度が定められているわけではないため、自社の事業内容や体制に応じて、定期的に確認できる仕組みを設定するとよいでしょう。

訓練で見つかった課題を計画に反映したり、担当者や連絡先の変更を更新したりすることで、BCPを現在の事業環境に合わせて維持できます。

最初から完璧な計画を作ることよりも、できるところから始め、点検と改善を繰り返していくことが、BCMを継続するうえで重要です。

よくある質問

Q. BCPとBCMは何が違うのですか

A. 内閣府「事業継続ガイドライン」では、BCPは事業継続のための方針・体制・手順などを示した「計画」です。一方、BCMはBCPの策定・維持・更新、事前対策、教育・訓練、点検、改善などを含む平常時からのマネジメント活動です。

Q. BCPを作ったのに使われないのはなぜですか

A. BCPを作成した後に、訓練や点検、見直しなどが行われなければ、計画が現在の状況と合わなくなる可能性があります。BCPの内容だけでなく、その後も継続して運用・改善できる仕組みがあるかを確認することが重要です。

Q. BCMはどこまでやればよいのですか

A. 内閣府の事業継続ガイドラインでは、BCMの内容は自社の事業内容や規模などに応じて経営者がその範囲を判断してよいとしています。初めからすべてを整えるのではなく、できることから始めて改善していく考え方も示されています。

出典

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